「アートとデザインの違い」

Ⅱ PandAインタビューシリーズ「この人に聞きたい!」  第1回  大寺聡さん


CHAPTER 3 「アートとデザインの違い」

早川)
今回は会場での案内役としてのボランティア研修を展覧会に先駆けて10回やったんですが、それは会期中だけのボランティアという意味じゃなく、作品と作家にも触れて、展覧会を一緒に作っていってもらおうという意図だったんです。
講師には作家さんにもなってもらい、とても好評だったんですが、大寺さんにも、次回、参加いただけませんか?
大寺)
僕はアートと違う立場ですからどうなんでしょうね?
早川)
そのアートと違うってことを分かっていただくことも、大きな意味がありますよね。
発想からそれをどうやって表現していくか?デザインの現場の苦労話みたいなこととか親しみが持てて面白いんじゃないかと思うんですよ。
大寺さんの作品を知っていて、作者はどんな人なんだろうって思ってる人はいっぱいいるんですよ。
今回の「触れる造形展」のメインシンボルが、作っていただいたポスターデザインだったわけで。入口のところに掲げてすごく映えてました。
大寺)
あはは、あれ、大きかったですよね。まあ、イラストレーションとデザイン、みたいな話なら出来るかも知れませんね。
僕も専門学校で月に一度教える機会があるんですけど、アートとデザインの違いを分かってない人が多いんですね。
僕は完全に分けて考えたいタイプなんですよ。しかも、どっちつかずで社会に出てしまう人が多いんです。
ほんとはアートやりたいけど、就職はデザインしかないから、とりあえずデザイン事務所に就職するとか。
早川)
ええ、そこらへんがトラブルの元になることって多いですね。それは金銭面もそうですし、デザインに対するスタンスの違いで、いつまで経っても話が平行線とか。
大寺)
あと、最近はハイレベルアマチュアとかセミプロみたいな人が多いんですが、そういう人たちもプロになるなら、プロを目指して欲しいし、趣味なら趣味でやって欲しいと。
そういう微妙な立場の人がデザインの価格を下げてしまうということがあって、ホントにアートをやる人が食べられないという事態を招く。
例えば一日かけて描いた絵を1000円で売る人がいる。そうすると絵ってこんなものなのっていう認識を持たれてしまう。ホントにプロのなるつもりの人はそんな値段をつけちゃいけませんよ。
早川)
そのあたりのことをきちんと伝えていくことも作家支援と言えますね・・・。
大寺)
どうしても鹿児島という器の小ささってこともあるんですが、大作家の鹿児島市立美術館でやってる催し物と、趣味でやってるサークル展とかが、並列して催しものとして告知されてたり。
そういうものも受け手がちゃんと識別できるかというとどうかなと。あと、グルメ情報とアート情報が同じだとか。何か区別して欲しいなという気がしてるんです。
早川)
「触れる造形展」会場の出口には募金箱をおきまして、無料だったけど来年にむけて支援してくれる人はよろしくという意味だったんですが、けっこう入っていまして。
大寺)
はい、僕も入れました(笑)。
早川)
入場料を決めて、ソレよりも良かったって思う人はこちらに入れて、というのもありだし。
私は鑑賞者も展覧会を作っている一部だと思っているので、そういう参加もあるのではと。
大寺)
面白いですね。イラストの個展の場合は入場料は取りませんが、会場で商談がいくつも発生しますからね。
いい展覧会をやれば、自分のやりたいことを創る側が見せて、そこに経済的な流れが生まれる。気軽にグッズやポストカードや作品集など、気に入ったから買うという。
でも、アートの場合は一点ものですから、そこにあるものを買わなければならないという意識があるでしょうし、価格もそれなりになりますよね。
早川)
なるほど、根本的に違いますね。
大寺)
今のデザインの場合はデジタルデータですから原画かどうかというのは、ほとんど問われない。
使用料の体系は決まってますし。僕も20年やってますが、徐々にギャラが上がるってことはなくて、書籍の表紙ならいくらと。
新人もベテランも、年齢も地位も関係ないというその点が僕は好きなんですよ。純粋に作品の情報に価値が生まれているという、そこがいいんです。
デザインは、いわゆる富裕層などをターゲットにしてません。アートはどうしてもある程度の富裕層を意識する必要があるでしょうけど。




2002年 オンセントシ



2004年 文化庁メディア芸術祭審査員推奨作品ナロウ・レンジより「異なる考え方の人々」 この人に聞きたい!
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